『ウインド・リバー』(Wind River)は、2017年にアメリカ合衆国で公開されたスリラー映画である。監督・脚本はテイラー・シェリダン、主演はジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンが務めた。なお、本作はシェリダンの監督デビュー作でもある。
本作は2017年5月に開催された第70回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、シェリダンが監督賞を受賞した。 シェリダンは、MMIW(先住民女性や少女の失踪・殺人事件を認知させるための運動)を背景に、ウインド・リバーにおける問題への意識を高めるためにこの映画を作ったと語った。
あらすじ
ワイオミング州ウインド・リバー・インディアン居留地。FWS(合衆国魚類野生生物局)のハンター、コリーは雪山に囲まれた雪原の中で、ネイティブ・アメリカンの少女ナタリーの死体を発見した。
BIA(インディアン部族警察)署長のベンは、FBI(連邦捜査局)に捜査を依頼するが、派遣されたのは新人捜査官のジェーン1人だった。ジェーンは過酷な環境での捜査に難渋し、コリーに捜査への協力を依頼した。
検視を行うと裂傷やレイプ痕があり、殺人の可能性が高いものの直接の死因は冷気を吸ったことによる肺の出血と窒息死であり他殺とは断定されなかった。 捜査を進めて行くとナタリーが極寒の中、10キロもの距離を裸足で逃げていたことが分かり、さらにナタリーの恋人マットの遺体が森の中で見つかる。
謎が深まる中、コリー、ジェーンらはマットの勤務先である掘削地の警備員たちに目星をつけるが、2人は真実とともにネイティブ・アメリカン社会の闇に直面することになる。
キャスト
※括弧内は日本語吹替
- コリー・ランバート - ジェレミー・レナー(阪口周平)
- ジェーン・バナー - エリザベス・オルセン(行成とあ)
- ベン・ショーヨ - グラハム・グリーン(楠見尚己)
- ナタリー・ハンソン - ケルシー・アスビル(石井未紗)
- マーティン・ハンソン - ギル・バーミンガム(木村雅史)
- ウィルマ・ランバート - ジュリア・ジョーンズ
- チップ・ハンソン - マーティン・センスマイヤー
- アニー・ハンソン - アルテア・サム
- ケイシー・ランバート - テオ・ブリオネス
- ダン・クロウハート - エイペザナクウェイト
- アリス・クロウハート - タントゥー・カーディナル
- マット・レイバーン - ジョン・バーンサル(木村雅史)
- ピート・ミッケンズ - ジェームズ・ジョーダン
- カーティス - ヒュー・ディロン
- ディロン - マシュー・デル・ネグロ
- カール - オースティン・グラント
- エヴァン - イアン・ボーエン
- ランディ・ホワイトハースト博士 - エリック・ラング
- フランク・ウォーカー - タイラー・ララッカ
- サム・リトルフェザー - ジェラルド・トカラ・クリフォード
製作
2015年5月、クリス・パインとエリザベス・オルセンがテイラー・シェリダンの監督デビュー作に出演することになったと報じられた。2016年1月、降板したパインの代役として、ジェレミー・レナーが起用されることとなった。5月31日、本作の主要撮影がユタ州パークシティで始まった。
公開
2016年5月13日、第69回カンヌ国際映画祭の会場で、ワインスタイン・カンパニーが本作の配給権を獲得した。2017年1月、ワインスタイン・カンパニーが本作の配給権を手放したとの報道があった。しかし、サンダンス映画祭の開催中に、ワインスタイン・カンパニーは再び本作の配給権を購入した。
2017年10月、本作の製作総指揮を務めたハーヴェイ・ワインスタインが長きにわたってセクハラを行っていたという報道が出た。それを受けて、本作のDVD版及びネット配信版のクレジットからワインスタインの名前が消されることになった。これは賞レースで不利にならないための措置でもあると報じられている。
評価
本作は批評家から高く評価されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには92件のレビューがあり、批評家支持率は87%、平均点は10点満点で7.3点となっている。サイト側による批評家の要約は「『ウインド・リバー』は観客をキャラクターが織りなすミステリーへと誘い込んでいる。脚本は知的で、俳優の演技も見事なものである。工夫を凝らした舞台設定はタイトル通りの恐ろしさを生み出している。」となっている。また、Metacriticには40件のレビューがあり、加重平均値は73点となっている。
『バラエティ』のオーウェン・グレイバーマンは「ヒューマニズムのある犯罪ドラマだが、興奮よりも狡知を感じる」と述べている。『The Verge』は「『ボーダーライン』と『最後の追跡』から続くフロンティア三部作の終幕であり、スリリングで暴力的な作品だ」と評している。『インディワイアー』のデヴィッド・エーリッヒは本作にB評価を下し、「もし『ウインド・リバー』が他の作品と同様に、シェリダンの弱点を抱えているのだとしても、同作はシェリダンの強みを最大限活かした作品である。観客が衝撃を受けるような作品ではないが、苦みがあり、人間の本能を向き出しにした作品である。」と述べている。
出典
外部リンク
- 公式ウェブサイト(日本語)
- ウインド・リバー - 映画.com
- ウインド・リバー - allcinema
- ウインド・リバー - KINENOTE
- ウインド・リバー - シネマトゥデイ
- ウインド・リバー - MOVIE WALKER PRESS
- Wind River - オールムービー(英語)
- Wind River - IMDb(英語)
- Wind River - Metacritic(英語)
- Wind River - Rotten Tomatoes(英語)




